2022年7月2日に2022年度第2回例会を開催しました。

2022年度第2回例会
【日時】7月2日(土)15時から18時
【報告者と題目】
増渕 あさ子(同志社大学政策学部)「福祉」から考える沖縄の米軍占領

 7月2日に地域紛争研究会第2回例会が開催された。本研究会では、沖縄の米軍占領を福祉の観点から捉え、占領の時期を特徴づける事象を示す報告が行われた。報告者は、「沖縄占領」の研究動向に関して、様々な研究がある中で外交・統治政策に力点を置く研究と住民に力点を置く研究とに大別されると指摘した。その上で、本研究が果たす役割として、三つの点が指摘された。第一に、米軍内部における衛生・福祉の知識の連続性と医療従事者を通した沖縄内部における連続性である。第二に、冷戦期のアジア太平洋地域を横断する軍事的ネットワークの文脈に沖縄占領を位置づけることである。最後に、医療従事者を通して、沖縄における軍事と福祉の結びつきが揺らいだ状況を捉えることである。理論的枠組みとしては、フーコーやアン・ストーラーの研究を通して、生政治と軍事統治の関係が指摘された。また、沖縄は、1945年に占領が開始された一方、「残余主権」により曖昧な地位に置かれたことで、共産主義の波及を防止する「楔」となったという議論も紹介された。こうした関心や理論的枠組をもとに住民福祉を中心に1945年から1972年までの沖縄占領の時期区分が紹介された。
 本研究会を通して、「日本帝国」「アメリカ帝国」における「帝国」の意味や、軍事と福祉をどのように結びつけるか、そして研究の「問い」に関する質問が行われ、米軍占領期における沖縄を分析する重要性が確認された。