2022年5月21日に2022年度第1回例会を開催しました。

2022年度第1回例会
【日時】5月21日(土)15時から18時
【研究会内容】
林忠行『チェコスロヴァキア軍団−ある義勇軍をめぐる世界史』(岩波書店、2021年)に関する合評会
【評者】
第1報告:月村太郎(同志社大学政策学部)
第2報告:仙石学(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)

 5月21日に地域紛争研究会の第1回例会が開催され、林忠行著『チェコスロヴァキア軍団-ある義勇軍をめぐる世界史』(岩波書店、2021年)について、同志社大学政策学部の月村太郎と北海道大学スラヴ・ユーラシア研究センターの仙石学による合評会が行われた。  第1報告では、まず本書全体を通して義勇兵に関する議論の重要性を指摘した。様々な種類の義勇兵が存在する中で、「義勇兵とは何か」との疑問を提起し、本書が義勇軍の一つのイメージを提供していることを指摘した。また、複数の国家が絡む国際政治や二重君主国の国内情勢など、本書の分析が重層的であることも指摘した。その上で、チェコスロヴァキアという民族を超えたつながりの発芽、ハプスブルクとオーストリア=ハンガリーの区別について質問した。
 質問に対して、「チェコとスロヴァキアの組み合わせ」の構想としては、クラマーシュによる提案がなされたが、組織名は1915年の「チェコスロヴァキア狙撃連隊」が初出であり、アメリカ移民の間でもチェコとスロヴァキアの一体化に関する議論があったという回答がなされた。国名については、オーストリア=ハンガリーとして統一され、それ以前の国家を想定したときにはハプスブルクとして区別したことが述べられた。
 第2報告では、本書が歴史的に重厚な記述である一方で、難解であることを指摘した。特に、本書の主題であるチェコスロヴァキア軍団と国家の形成過程との連関を把握することが難解であるとのことである。以上の問題意識に基づき、チェコにおける「ナショナリズム」の形成、「チェコスロヴァキア構想」の出現理由、独立運動の「成功」と軍団の関係などの質問がなされた。
 著者からは、パリ講和会議についての記述の必要性が指摘された。その上で、1918年6月から9月にかけて連合国によるチェコスロヴァキア軍団と国民評議会の「承認」が、チェコスロヴァキア独立に向けた国際環境の整備につながったと回答した。  
 本研究会を通じて、「チェコスロヴァキア軍団をどのようなレンズを通して見るのがよいか」、「なぜ『チェコスロヴァキア』という語順なのか」などの質問がなされ、活発な議論が展開された。